『夢縁坂骨董店』第2品
〜死神の砂時計〜***ストーリー(2)
画面が回転し、奈々子が10年前に教育実習で行った学校になる。
[3-D] の教室。男子高のようだ。教室内の生徒の半分位はだらけて寝ていたりフザケていたりする。(寝ている子のマブタにマジックで目が書いてあったりする/笑)
教壇に奈々子の後ろ姿(白のポロシャツにベージュのパンツ)。黒板に大きく「有森奈々子」と書いて、笑顔でふりかえる。生徒を見渡しながら話しはじめる。
奈「今日から2ヶ月、教育実習でお世話になります、有森奈々子です。皆さんと一緒に頑張るんで、よろしく!」
カメラ、だらけている生徒達を映す。奈々子、むっとした表情で教壇を離れ、生徒達の間に入っていく。音楽を聞いてる生徒のヘッドホンをむしり取り、弁当を食べてるのを止めさせ、マージャンしてる所に行って牌をぐちゃぐちゃにする。
生徒「なにすんだ!」「なにすんだよてめー!」
奈々子更に、あおむいて寝ている生徒の顔の上に乗ってる本を取る。(それが真田俊平。)不良達が奈々子を取り囲んで凄む。
生徒「てめえ〜ざけんじゃねえぞ!」
奈々子、フンッと鼻で笑い、きびすを返して教壇に向かう。
奈「(さわやかに)今からテストします。」
生徒たち「はあ〜〜〜〜!?」
奈「(ガヤガヤする声に負けないように大声で)まずはぁ、みんなの実力を知らないとね〜!」
言ってる間に6人の不良が「冗談じゃねえよ」と教室から出て行く。奈々子、答案用紙をくばって教壇に戻る。
奈「さあ、がんばってね!」はつらつとしてます…^^。
一番後ろの席から、不良がひとり答案用紙を持って教壇に向かって歩いてくる。
バン!と答案を教卓に叩き付け、奈々子にガンをとばして教室を出て行く。黙って見送る奈々子。出された答案に目をやると、ほとんど白紙だが一問だけびっしり数式が書いてある。名前は真田俊平。校舎の屋上に、3人の不良生徒が寝転んでいる。ひとりは真田俊平。真田は学ランの中に赤いTシャツを着ている。もう一人が黄色、もう一人が緑(わかりやすい…)
不良緑「あ〜、あの先公ウゼエな〜〜」
不良黄「ああ」
不良緑「(起き上がり)そうだ!一発犯っちまうか?」
不良黄「!?『松崎君!』『有森せんせ〜!』」
緑が黄の上にのっかってけしからん演技をする。←やめれ!
真田「(うざったそうに)やめとけよ!」校内を走っている奈々子先生。校庭を横切り、体育会系の部室?らしき所へ向かう。
奈「真田君が怪我をしたって、本当!?」
うずくまっている真田に駆け寄り、かがみ込む。両脇のふたりの不良が目配せをし、不良黄が奈々子を羽交い締めにする。
奈「なにすんのよ…やめなさい!!」
不良緑「今日は個別レッスンしてね、せんせ♪」
身動きできない奈々子の頬を不良緑がぺちぺち触る。奈々子の目が大きく見開かれる。カーン!(←効果音。奈々子の頭に血が登る音)
奈々子、目の前にいる不良緑の股間を蹴りあげる。倒れてのたうち回る緑。続いて背後の不良黄の脚をかかとで踏む。「痛え!」そのまま背負い投げる。(ほんとに投げているわけではないようですが、カッコいい演技です)
真田「てめえ〜なにすんだオラ〜〜」
奈々子、ニッコリ笑ってゲンコツを突き出す。シュッ!(←効果音)(カメラに向かってパンチがくるので怖い/笑)鼻血を出して後ろに倒れる真田。(コミカルなBGM)校庭の朝礼台に、3人の不良がパンツ一丁で立たされている。校舎の窓から生徒たちがはやしたてる。
奈「許してあげるから。明日の自習には出席するのよ。わかった!?」
3人が黙ってモジモジしていると、ゲンコツを掌に打ちつけながら奈々子が凄む。
奈「また、なぐられたいの?」
わーと逃げ出す不良達。その後ろ姿に向かって、サワヤカに奈々子が叫ぶ。
奈「男の約束よー!」←あなたが一番男前です…*******CM*******
翌日、3-Dの教室。チャイムが鳴り、帰っていく生徒と挨拶を交わし、黒板を消す奈々子(青いポロシャツに白のパンツです)。
ひとりになり、席に座って書類を見ていると、真田が入ってくる。
奈「やっと来てくれたのね。」
真「(嫌味たっぷりに)男の約束だからな。」
真田、席について脚を机の上に乗せ、マンガを広げる。
奈「罰として、これから3時間の特訓よ!」
真「ざけんな俺は来ただけだ。勉強なんかするかよ〜」
奈々子、真田の目の前に答案用紙をつきつける。数式の問題にはマルがついている。上目で奈々子を見る真田。
奈「10点。」
真「…。俺ァバカなんだ。わかったか」
奈「これは去年の東大入試の難問題。担任がイジワルで出した問題よ? これが解けたということは、あなたは満点が取れたはず。」
真「フンッ。」
奈「わざと白紙で出したのね…」
真「(くだらねえ、という感じで)こんなのマグレだ」
奈「………。あなた、なんの為に生きてるの。」
真「しるかよ」
奈「…ヘェ。自分の事もわからないんだ。」
奈々子、真田に歩み寄り、机に両手をついて強い口調になる
奈「だったら『俺はこれをやる為に生まれてきたんだ』って言い切れるものを見つけなさい!」
真「おまえにはあんのかよそんなもん!」
マンガから顔をあげて叫ぶ真田。真剣な奈々子の視線と視線がぶつかる。
奈々子、ニコッと笑う
奈「私は、魔法使いになりたいの。」
真「ハァ!?」
おもいっきりバカにして、目をマンガに戻す真田。
奈「ちいさい頃、病気で死んで行く母を見ながら、『魔法使いになりたい』って強く思った。…だからどんな病気も治せる医者になって、大勢の命を救いたいって。」
真「じゃあなんで…教育実習なんて来てんだよ…」
奈「父の会社が倒産してね。学費が払えなくなっちゃって。(明るく)で今は、君達みたいな生徒を救う魔法の勉強中、ってワケ。」
奈々子、教卓から1冊の本をもってきて、真田の前に置く。使い古した「ポケット版・医学辞典」である。
奈「ボロボロでしょう。(笑う)まだ諦めがつかなくて。一応努力してんのよ」
真田はすっかり居心地悪そうに目をさまよわせる。突然立ち上がり、本を乱暴に払い落す。
真「…(セリフひとつ聞き取れません)ほっといてくれよ!!」
奈々子の顔から笑みが消える。床に落ちた本をじっと見る。その横顔を見て、はっとする真田。だが何も言えず教室から駆け出して行く。
立ち尽くす奈々子。本を手にとり、唇をかんで、バラバラになったページを拾い集める。
別の日、校舎の屋上。赤緑黄の不良が昼メシを食べている。
緑「あの先公よ、今日の実習でいなくなるんだってよ〜」
黄「ったく、ウゼエ女だったな。」
真田、食べかけのパンを不良緑に押し付け、トイレに行くといっていなくなる。誰もいない職員室。そーっと入っていき、有森奈々子のデスクに近づく。カバンから青い紙袋を取り出したところで、男性教師が入ってくる。ビクッとふりかえり、紙袋を背中にかくして振り返る真田。そのまま、うしろ手に持った紙袋を奈々子のデスクに置き、ごまかして職員室を出て行こうとする。
教師「どうした?また悪いことでもしてたんちゃうか?」
真「っっせー! …ハゲ!!」
教師がよろめいて奈々子のデスクに当たり、真田が置いた紙袋が落ちて床のゴミ箱の中に入る。真田は廊下で、むこうからやってくる奈々子とすれ違う。(先生、白のワイシャツに紺のスーツです)バーン!(←効果音)ふたりの視線が合う。
10年後(=現在)の真田の顔と声が、画面に出る。
「最後のプレゼント…気に入ってもらえたかどうか」
廊下を走り去る真田を見送る奈々子にかぶって、現在の奈々子の声がする。
「わたし…そんなの貰ってない」
急にハッとしたように、奈々子は職員室に向かって走り出す。砂時計の砂が落ち続けている。もう残り時間は少ない。
職員室に駆け込み、デスクの回りを探す奈々子。ゴミ箱の中に紙袋をみつける。
落ち続ける砂時計。秘美子の声が聞こえる。
「ただし、決して過去を変えてはいけません。いわくが解き放たれ、運命は暗転します」
迷う奈々子。落ちる砂時計。
ついに紙袋を拾いあげる。その瞬間砂時計はピタリと止まり、煙になって消える。現在の、奈々子の部屋。
テーブルにつっぷしている奈々子。顔を起こすと、目の前にあった筈の砂時計がなくなっている。そして、アルバムが入っていた箱の中には青い紙袋がある。
紙袋の中に入っていたのは、新品の「ポケット版・医学辞典」だった。
さらに手紙が入っているのに気付き、開いてみる奈々子。男子高校生らしい色気のない便箋に、汚いが真面目な字が並んでいる。
「先生ごめん。
もし許してくれるなら、10年後の9月11日、中央公園に来てください。
朝から一日、噴水の前で待ってます。
僕はあなたと同じ医者になって、あなたにプロポーズするつもりです。」
「プロポーズ」の文字に微笑む奈々子。「9月11日」の文字に目がとまる。
奈「今日だ…」
時計を見る。午後4時7分。
思い迷う奈々子の脳裏に、ラブホテルで会った真田の言葉が蘇る。
真「あした、アフリカに発つんです」ドーン(←効果音)中央公園。
雨の中、時計の針は午後5時10分を指している。
噴水の前に傘を指した真田が、スーツケースを脇に置いて立っている。携帯電話で話をしている。
電話の声「真田!飛行機まにあわないぞ!」
真「わ、わかった。あと30分だけ…」
電話を切り、待ち続ける真田。奈々子が赤い傘をさして走ってくる。
公園の時計の針は5時30分になっている。なおも待っている真田。
真「先生…。」
走る奈々子、途中で傘を放り捨てる。
待っている真田の顔と走る奈々子がかぶる。
真田の手紙の続きが流れる
「もし来てくれなかった時は、先生の事はきっぱりとあきらめ、新しい人生を歩きます」
真田、あきらめがついたように微笑む。奈々子が息をきらして公園に駆け込んでくる。噴水の前には誰もいない。間に合わなかった。
時計の針は5時50分を指している。誰もいない空間に向かって奈々子は叫ぶ。
奈「真田君………ごめん……っ!」
持っていた手紙をぎゅっと握りしめる奈々子。(ロマンチックなBGM)奈々子の顔がストップモーションになり、張り付いた絵のようになる。妖しい効果音とともに、同じ画面に秘美子の姿が浮かぶ。
秘「これで、よかったのですか…?」
奈「これでいいんです。今の私は、彼に会う資格ないから。」
固まった奈々子の目からキラリと透過光がこぼれる。←ここの合成ヘン…;;夢縁坂骨董店。
秘美子の手が、砂時計を元の位置に置く。
魔界の声「人生は時を刻むという意味では、砂時計に似ている。ひとつぶひとつぶ、とても大切なものを落としながら、人は生きて行く…」
鏡の中に、奈々子の部屋が映る。Tシャツとパンツに着替えた彼女は、テーブルの上に本とノートを置き、あらためて真田がくれた医学辞典を開こうとしている。すると本の間から、10年前の彼の答案用紙(10点のやつ)が出てくる。「真田俊平」の名前を見て、ほほえむ奈々子。
秘「それでも、彼女は幸せそうですよ。…魔界、わたしはこのごろ奇妙な夢を見るんです」
鏡の中の奈々子の映像が消え、魔界の顔があらわれる。
魔「どんな夢だ?」
秘「緑の森で少女がみつめていて、そして…」
「琥珀の月を探して」という謎の少女の声が何度も聞こえてくる。秘美子の様子がおかしくなり、右腕の三日月形のアザが金色に光る。〜〜〜次回につづく〜〜〜(でも奈々子さんの出番は今回でおわり)
以上。おつかれさまでしたっ!!