『夢縁坂骨董店』第2品
〜死神の砂時計〜

***ストーリー

オレンジ色のランプが揺れる、薄暗い骨董店の中。
紫と黒のセクシーな衣装をまとった背の高い女が、瞑想から覚めるように目を開き、銀色の剣をふるって舞うように動く。
夢縁坂骨董店店主 秘美子 矢松亜由美 (←テロップ)
秘美子(以下)「ハッ!」
声とともに、売り物の掛け軸がまっぷたつになる。
「………………(汗)」
ふと振り返り、背後にある鏡を見る。と、そこには坂を登って行く人物の後ろ姿が写っている。

赤い傘をさし、踵の細いハイヒールをはいている。よろよろした足どりで石段を上がる後ろ姿。何か思いつめているような表情がアップになる。
死迷人 有森奈々子 紫吹淳 (←テロップ)

奈々子(以下)の回想〜(ミステリアスなBGM)自分のサイフから札を抜き出す男の手。
「いいかげんにしてよ!今月の食費なのよ!」
ランニング姿の男にすがりつく奈々子。(白のパンツにベージュのTシャツです)
「奈々子が仕事ふやせばいいだろ。金返さないと殺られんだよ!」
男は乱暴に奈々子を振り払い、逃げるように出て行く。(貧乏感漂うアパートです…)

さらに奈々子の回想〜携帯の画面。「ラブチャット」のピンクの文字がある。
お人好しそうな秋葉原系の男が部屋に入ってくる。(殺風景なマンションの一室に赤いソファが置いてあるだけ。ラブホテルにしては地味だ…)
「携帯のチャットメールで知り合った女性とネ、はじめて会う瞬間てたまらな…」
「前金で10万円!」
ずいと手を出す。(クリーム色のアンサンブルに茶のスカートです)
「ヘッ、金とるのォ!?」
突然ヤクザ風の男達が現れ、アキバ系の男を殴り倒して金を奪う。
「もう、こんな事は………」
ヤクザ「甘えてンじゃねえよ!」
奈々子をつきとばす。
黒服に赤いバラの花を挿したヤクザが奈々子に顔を近付ける。背後では別の男が札を数えている。
「有森サン。あんたのオトコがまた大金を借りてねェ…。(って、さっきの男か?ちっともカッコよくないのに何で別れないんだりかさん!!!や、りかさんじゃないけど一生、骨までしゃぶらせてもらうよ〜〜」ヤクザ、いやらしく舌を出してアピール。(はなれろ〜〜〜!バカ〜〜!!なにが一生だ!!別れりゃ終わりだろうが!!!)嫌そうに顔をそむける奈々子。

坂を登る奈々子のアップに戻る。
「どうしてこうなったんだろう………」←それこそ聞きたいですよ
石段の途中で足が止まる。まっすぐ前を見る奈々子。紫の雲が流れる合成画面の中を、石段が天に向かって延びている。

ふたたび回想〜学校の廊下で学ランの男とすれ違う奈々子。(ポニーテールに紺のスーツで書類を抱えている。)学ランの男の顔が、髪を切った大人の男の顔になる。光の中で照れたように笑う男。ガシャーン(←回想が壊れる音)

坂の頂点をみつめ、躊躇いながら奈々子がまた歩きだそうとしたとき、ニャ〜という声が聞こえる。右手を見ると猫の形の看板に「夢縁坂骨董店」と書いてあり、ツタがビッシリと絡んだ小さな建物が、あやしく渦巻く雲の合成画面をバックに聳え立っている。(日本語変ですが、まさにそんな変な画面です。)
「こんな処にお店が…?」
吸い寄せられるように建物に向かう奈々子。(何かが起こりそうなBGM)

******CM******

骨董店の中。ロウソクの炎とランプの灯りの中、天井から赤や紫の布が下がり、妖し気な置き物や曰くありげな仮面、銃などが陳列されている(先刻まっぷたつになった掛け軸もある)。ぼんやりと見回す奈々子。
斜に視線を落すと「死神の砂時計」と書かれた札に目がとまる。
(死神…。私はきっと、死神に取り憑かれてるんだわ…)
砂時計を手に取って眺める。
「夢縁坂骨董店へようこそ。」
振り向くと店主の秘美子が立っている。
「何をお探しですか?」
「いえ、いいんです…」
砂時計を元の場所に置こうとする。
「私には見えてしまうんです。あなたの願望が。」
「え」
秘美子を見る。喋りながら近づいてくる秘美子。
「あなたは死神に取り憑かれている位、ついていないんですよね。」
「あなた、一体なんなんですか?」
「私は、生と死の案内人、秘美子。私の使命は、あなたの最期の迷いを見届けること。」
奈々子と向き合う秘美子。その額から星葛のような透過光が湧いて、奈々子の頭を包む。
奈々子の目のアップ、瞳孔の奥に、回想シーンの映像〜ヤクザの赤いバラ、光の中で微笑む男の顔〜がフラッシュバックで浮かぶ。
そのままカメラ引いて奈々子の顔のアップになる。(まさに死神に憑かれたような、感情の無い目でじっとこちらを見ます)
「わたし、会ってはいけない人に会ってしまったんです。」

みたび回想〜狭い建物の階段をカップルが降りて行く。すれ違いに登ってくる奈々子、後ろにグレーのジャケットの男が続く。(服は坂を登ってる時のと同じです。)
部屋の中。奈々子が上着を脱いで肩があらわになる。その背中を見てうろたえる男。
奈々子は窓際に立ち、右手でうなじをかきあげながら、ふりかえる。(逆光ですっごく綺麗です〜なんかのプロモーションビデオみたい…)
「こういう事、はじめて?」
赤いソファに腰をおろし、テーブルに小さなバッグと携帯電話を置く。男は立ったまま。
「いやそのぅ…まったくの、はじめてで。」どぎまぎしている様子。
誘うようにみつめる奈々子の表情がアップになる(たまらん)。優雅に脚を組む。(すばらしい脚線美)シャーン!(←効果音)

「や、やっぱり、かえります!」なんだ、美しすぎてびびったのか?
奈々子は焦ったように身を起こして引き止めようとする。
「わたしが気にいらない?」そんな訳ないでしょう
「やっそういう訳じゃなくて…実は俺、忘れられない人がいて、ずっと…」なんだと!釣られといてそれはないだろう!
「っふふっ。そんなに想われて、よっぽどいい女なのね?」バッグを開いて煙草を取り出す。
男は奈々子を見てうなずく。
「はい。素晴らしい先生でした。」
「…先生?」
「ええ、病院の先生を目指してた人で…学校の先生にもなろうとしてた人で。」
煙草をくわえたまま、奈々子の表情が変わる。カーン(←効果音)10年前の笑顔の奈々子と学生達との記念写真が浮かぶ。
「で、俺も先生目指して頑張ろうかな! ……って、俺、何いってんだろ…」
照れ笑いしていた男は急に真顔になり、奈々子を見る。奈々子は目をそらし、煙草を口からはずす。
「あたし、医者も教師もだいっきらい。」
開き直ったように男を見て微笑む。
「あんたエリートなんだ?」
「いいえ! 2浪して、やっと医大に合格して…。2年前、どうにか医者になることが、出来たんです。あれから10年…やっと、有森先生に会う資格が出来たんです。」
シャーン!(←効果音)
「…有森?」
「有森、奈々子さんっていいます。」
男はその名前を言いながら、奈々子をじっと見る。ガーン(←効果音)
男の顔に続いて、記念写真の映像が浮かぶ。学生達の一番端に立っている、ふてくされたような学ランの男の顔がアップになる。
奈々子の独白(真田俊平…。彼は10年前、教育実習で受け持った教え子だった…)
男から目をそらす奈々子。
「実は明日、アフリカに発つんです。医療過疎の地域で仕事が決まって…。で、最後にどうしても確認したい事があって、先生さがしてて…」
「確認?」
「…最後のプレゼント、気に入ってもらえたかどうか……」
「プレゼント…」
奈々子は思いめぐらす(わたし…そんなの貰ってない…。)
「ごめんなさい。
(頭を下げる)チャットをしたのは、何か少しでも手がかりが掴めればと思ったからで。でも、人違いでした。」
男はどこか諦めきれないような表情で奈々子を見る。奈々子は逃げるように視線をさまよわす。
「奈々子さんは、すばらしい学校の先生か医者になって、多くの人々を救っている筈ですから。」←そう思うなら出合い系で探したりするなバカモノ!

えーと…公式に載ってるあらすじには、彼は目の前にいるのが当の奈々子さんだと気付かなかった、と書いてありますが。ふたりの演技を見ると、彼は気付いていてわざとこのような台詞を言ってるようです。だからこそ奈々子さんは自殺したいくらい傷ついちゃったんですよねぇ…

場面は骨董店の中に戻る。
「わたし…顔をあげる事ができませんでした。」
秘美子は黙って砂時計を手に取る。
「これは『死神の砂時計』といいます。」
「死神?」
うなずいて秘美子は語りはじめる。
「プラハの旧市庁舎には、15世紀に作られた天文時計があります。そこには、砂時計を持った死神が施され、キリストの12使徒を呼び出しています。死神の持つ砂時計は、命の残り時間を表していると言われ、(ここまでは本当の話。いいなあプラハ…行きたい…)この砂時計はその原形となったものです。この時計を逆さまにすると、砂が落ちている時間だけ、(奈々子を見て)あなたが最も輝いていた時間を追体験することができます。」
「…あの頃に…戻れるの?」
秘美子は黙ってうなずく。奈々子は揺れる目で砂時計をみつめる。10年前の学生達との記念写真がフラッシュバックする。
とり憑かれたように、震える手を砂時計に伸ばす奈々子。
「ただし」
奈々子は秘美子を見上げる
「決して過去を変えてはいけません。いわくが解き放たれ、運命は暗転します。」
小さくうなずき、奈々子はそっと両手で砂時計を受け取り、じっと見る。

奈々子の部屋。
何もない畳敷きの部屋のむこうに、窓のあるもう一部屋があり、奈々子がテーブルにつっぷしている。顔を起こし、夢から醒めたように部屋を見回す。目の前に砂時計がある。おそるおそる手に取ってみる奈々子。
その光景が鏡の中に収まり、それを見ている秘美子(骨董店の中)のシーンになる。
魔界の声「秘美子よ。願望の旅が、今はじまった。彼女のまことの願望を見届けるのだ。」
「はい。でも、最も輝いていた時間とは、どんな時間なのでしょうか。」
鏡の中の映像が奈々子の横顔から「魔界」の顔に変わる。(この「魔界の顔」が、話題のデジタルクローン技術で作られた映像のようですね。アニメーションとは違う、いかにも人工的な動きをします。友人に見せたら「XのHIDEちゃんだ」と言ってました。そ、そういえば赤い髪といいメイクといいヒデちゃん!言われるまで気付かなかった…)(←後で知ったのですが「魔界の顔」役の坂東亀三郎さんは大変なHIDEちゃんファンであったらしい…失礼しました;)
「それは人それぞれだろう。そういえば私にもあったなあ。」
「え、ほんとですか?」
「メチャクチャ美しかった。見てみたいか?」
「はい、ぜひとも。」
「特別にここだけの未公開ショットだからな!」
顔が、帽子をかぶったソバージュの変な女?の顔に変わる。(なんだかキモチワルイ…)おもわず声を出して笑う秘美子。魔界の顔が元に戻る。
「おまえ…ケンカ売ってンのかよ」
「あ…すいません。」
 これは……笑うところ?

奈々子の部屋。
窓の横にあるタンスを開けて箱を取り出し、ちゃぶ台の上に置く。箱の底にあったのは「nanako '93〜'95」と書かれたオレンジ色のアルバム。(ロマンチックなBGM)
(大学4年の時、父の会社が倒産した。医大に通っていた私は学費が払えなくなり、インターンを諦めて教師の道を進むことにした。あの頃は、情熱を持って夢を追いかけていた…)

顔をあげ、遠い目でどこかを見る奈々子。写真の高校生の顔と、大人になった真田の顔がかぶる。シャリーン(←効果音)
「最後のプレゼント、気に入ってもらえたかどうか…」
「最後の、プレゼント………」
卓上の砂時計がアップで映る。奈々子はおもいきってそれを掴み、ひっくりかえす。

画面が回転し、10年前奈々子が実習に行った学校になる。

>>NEXT