〜紫吹淳ストレートプレイ初主演〜
ロマンチックコメディ『グッバイ、チャーリー』
作:ジョージ・アクセルロッド/訳:米村あきら/台本・演出:堤泰之

以下、NELが観劇の記憶を元に書き起こしたモノです。おもに自分自身の思い出を残しておくために作成したページで、ストーリー、イラスト共にかなりイイカゲンです。だいいち、本当はもっと面白かったのです。舞台をご覧になっていない皆様にこれでイメージがついてしまうのはいかがなものか?ですが、雰囲気の片鱗でも感じていただけたらと思います。

***1幕***
舞台は1950年頃?のアメリカ、ハリウッド。
海に面した白い家のリビング。部屋の中央のソファには主人であるチャーリー・ソレルの遺影が置かれ、その前にふたつの花束。両の壁際には沢山のさまざまなデザインの椅子が並べられている。
チャーリーの親友であったジョージが中心に立ち、今まさに本人の葬式が行われようとしているのだが、列席者はチャーリーのマネージャーだったアーヴィングと、チャーリーが過去に契約していたプロデューサー某の妻フラニイが夫の代わりに来ているだけ。もう1時間も待ち続けているが、これ以上誰かが来そうな気配もない。
仕方なく追悼スピーチを始めるジョージ。
如何にチャーリーが良い人物だったか説明しようとするが上手くいかない。とにかく彼は人生を楽しむ達人だった。旨い酒、旨い食事、賭け事、そして女性…パーティでの彼はホステスの婦人方にとっては無くてはならない存在だった。上手く言えないのは、その…要するに彼はどうしようもないプレイボーイだったのだ。結局「チャーリーは、チャーリーだったのです!」としか言い様がないのだ。
アーヴィングはチャーリーの借金とトラブルをぼやき、フラニイは「彼の事はよく知りませんの」と言いながら遺影にすがって泣き、二人とも次のパーティに出席するためにそそくさと帰って行く。

*********

一人残って片づけをしているジョージ。そこに現れたのはラスティ・メイヤリング夫人。驚くジョージ、なぜならチャーリーを殺したのは彼女の夫。
チャーリーはメイヤリング氏に招かれたヨットの中で夫人と不倫している現場をみつかって、拳銃で3発撃たれたのだ。そのまま海に落ちる音がして、死体は発見されていないという。
喪服のラスティは言う。彼が残した手紙を処分しなければ、自分だけでなくハリウッドの多くの女達が大迷惑だ(その中にはフラニイ・ズイマーマン夫人も含まれている!)。
ラスティの話を聞き、改めてジョージは親友がトンデモナイ紳士だったと知る。この部屋にある沢山の椅子は、それぞれ別の女の為に用意されたものだったのだ!

*********

ラスティが帰ったあと、尚も一人残ってグラスを傾け、淋しさに浸るジョージ。嵐の音がして、突然、ひとりの人物が部屋の片隅にあらわれる。
彼(彼女?)は気安くジョージに呼び掛け自分はチャーリーだと言うが、その姿は遺影の男とは似ても似つかない。ぶかぶかの男の服を着た女の子にしか見えないのだ。
が、おかしいのはジョージのほうだ!とチャーリーは自分と相手の共通の記憶を語って聞かせる。
軍隊で一緒だったこと、ジョージの腕の入れ墨のこと、兵役から帰ってジョージは映画監督、自分はシナリオライターで一緒に仕事をしたこと、共通の秘書の女の子と同時にデートしようとしたこと、数年間一緒に暮らしたこと、そしてジョージが仕事にかかりきりの時、当時の妻のエスコートをチャーリーに頼んだこと……。
ジョージ
「あれは…思い留まるべきだった!」
チャーリー
「なんだ、おまえ気付いていたのか」



どうやらこれは本物のチャーリーだ…ジョージは頭を抱える。
チャーリーはようやく自分のほうも「何かおかしい」と気付く。
いまは何日だ?俺はどこから来た? 記憶を辿ってみると、メイヤリングに撃たれたはずだが…じゃあ俺は死んだのか!?死んでるのか??
「いや、死んでる気がしない。ただちょっと……」
自分の身体を触り、下半身を確認して驚愕するチャーリー。


おそらく神がチャーリーの女たらしを罰する為に、彼に女の身体を与えて生き返らせたのだ。

ジョージは大笑いだ。がチャーリーはそれどころではない。着替えて落ち着こうとしたが落ち着かない。どうせ生まれ変わるなら他のものが良かった。
チャーリーは「女なんて男あっての生き物だ!」と怒るが、ジョージはそれは笑うべき偏見だとなだめる。立派な女性だって沢山いるのだ。だがチャーリーは、自分はそんな立派な女性にはなれないだろうと嘆く。
葉巻をくわえるのも取っ組み合いの喧嘩も、もう止めたほうがいいとジョージは忠告。それより女性としての武器を身につけたほうがいい。
ジョージ
「平手打ちは良い。ひっかくのも良い。物を投げるのも良い。にっこり笑うとか、ウィンクするとか。」
チャーリー
「やだよ、気持悪い!」
これが神のイタズラだというなら、過去を悔い改めれば元の身体に戻れるのか?…やってみたが駄目だ。
やはり女性として生きて行くしかないらしい。
ジョージは、本物の女性に色々教えてもらうべきだと言うが、チャーリーの口から出るのは女性の悪口ばかり。
ジョージ
「これは…たいした進歩だ!」
チャーリー
「進歩って何が!?」
ジョージ
「本物の女性にしか言えないような意地の悪い言葉を並べてる!」
チャーリー
「……… つい、口から出たんだ………」
とはいえ女が男に惚れる気持なんてわからない! しかしノーマルでありたいとは思う。今までは女好きだった自分だが、女性になった以上、男性を好きになるのが健全というものだ。
よくよくチェックしてみると一応、若くて綺麗な身体のようだ。ジョージに協力してもらい、女として扱ってもらえば女らしくなれるかもしれない。
だんだんその気になってきた! つねに前向きなチャーリーは、ラスティが置いていった化粧品やネグリジェの事を思い出し、早速「おめかし」してみようとベッドルームに消える。

*******

そこに、チャーリー殺しで一旦は留置されたがアッという間に保釈されたメイヤリングが、ジョージを頼ってやってくる。妻に追い出されて行く所がないというのだ。
ジョージ
「チャーリーは他人の恋人や妻と一度は寝なきゃ気が済まないきちがいだった! あなたがラスティを彼の腕の中に放り込んだようなものです」
メイヤリング
「君も同じ経験をしたというわけだ」
ジョージ
「あなたと同じ穴のむじなにされたくない!! ………僕は、チャーリーを殺さなかった」
メイヤリング
「殺さなかったというより、殺せなかったんじゃないのか?」
メイヤリングは「撃つべきは妻だった」と後悔してみせ、チャーリーは良い奴だったと誉める。ジョージは感動する。
ジョージ
「わかりました。その言葉は彼に伝えましょう」
メイヤリング
「伝える?」
ジョージ
「彼に…また会ったら、の話です」

ふたりが顔を合わせたら大変と焦るジョージ。早く追い返そうと焦るが間に合わず、遂に「おめかし」完了したチャーリーがノリノリで登場!
もちろんメイヤリングはそれがチャーリーだとは気付かない。

鈴置さん、ごめんなさいごめんなさい……;;;

失神から覚めたメイヤリングは、ジョージから彼女はチャーリーの恋人だったと聞かされる。イイ女だと興味を持つメイヤリングだが、怒り満々のチャーリーは彼を追い返す。

*********

メイヤリングはチャーリーを撃った事を後悔してるんだよとジョージは言うが、チャーリーは「奴は空涙の名人なんだぞ!」と取り合わない。
だが、「イイ女」と見られた事はまんざらでもない。俺ってもしかして、ヤツ好みのスレンダーな美女なのかも? ジョージは反対でむしろ「グラマーだ」という。
機嫌をよくして、チャーリはとっておきの酒を開けてジョージと共に飲みはじめる。

ジョージとしては、親友として協力はするが自分の生活には関わらないでほしいのが本音。いちばんの問題はどうやってチャーリーが今後の生計を立てて行くかだ。
男と結婚すればいい、とジョージは提案する。
ジョージ
「繭から孵ったばかりの美しい蝶に、乾杯!」
チャーリー
「繭に閉じこもろうとしている男に、乾杯!」

逃げようとするジョージをチャーリーはウソ泣きで引き止める。
そうだ娼婦になろう!男をひっかけて生きて行こう! それも高級娼婦だ、クラブやプールサイドで男を誘う。だが困った、俺は女の手管を知らないぞ。
チャーリーはジョージを相手にチークダンスの女性パートを練習する。最初はつい男役になってしまうが、力を抜いて身を預けてみるとなんだか心地よい。先刻まで何とも思わなかったジョージの目尻の皺にまで魅力を感じはじめるチャーリー。

2人がいちゃいちゃ(?)しているところに、突然、ジョージの恋人ジェニファーが登場。待ち合わせに来ない彼にしびれをきらして乗り込んできたのだ。大焦りのふたり。
嫉妬に燃えるジェニファーに、ジョージは「こちらは、ミセス・チャーリー・ソレル」と紹介する。
チャーリー
「ええっ、あたくし亡くなったチャーリーの、妻ですの!
 …つまり、未亡人!?
 お近づきのしるしに、シャンパンでもいかが〜?」

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2005/05/07 Text&Cut by NEL