黒革の手帖

2006年10月3日〜26日 明治座

原作: 松本清張「黒革の手帖」(新潮文庫)
企画/古賀誠一 脚本/金子成人 演出/西川信廣
製作発表の様子はこちら>シアターガイド

*配役*
米倉涼子・・原口元子 もと銀行員。横領した大金と顧客の黒いリストをもとに、夜の銀座の頂点を目指す。クラブ「カルネ」のママ。
岡本健一・・安島富夫 もと国会議院秘書。元子と恋仲になるかと思われたが…?
紫吹淳・・・岩村叡子 元子の高校時代の先輩。クラブ「燭台」のママ。
波乃久里子・千野照子 おでん屋「だるま」の女将。
遠野凪子・・山田波子 「カルネ」のホステスだったが、楢林をパトロンにして独立。
北村総一朗・楢林謙治 美容外科医院の院長。「燭台」「カルネ」の客。
山下裕子・・中岡市子 楢林クリニックの婦長。楢林の愛人だが…。
金田龍之介・長谷川庄司 一流クラブ「ルダン」のオーナー。
津川友美・・島崎すみ江 赤坂の料亭「梅村」の仲居。
左とん平・・橋田常雄
 医学系予備校の理事長。楢林とは知り合い。
甲斐政彦・・村井 元子が勤めていた銀行の次長。横領事件を境に人生を見失った。
萩野崇・・・倉持 クラブ「カルネ」店長。
楓沙樹/佐々木信彦・タンゴダンサー

桐山浩一/嶋原桂/水島涼太
池田貴宏/荒川智大/小山亮一/栗野史浩/真柴幸平/水野直浩/
福地香代/森川芳衣/中村ひろみ/小林加奈/本間なごみ/
山口尚子/井上有香/夏美れい/阿部裕見子/久藤和子/飯田千賀/
杉浦美和/朝倉亜実/塩山美緒/豊田玲紗/榊原悠祐/高草量平

*開幕前*

古き良き東京の香りを残す明治座。
この劇場に私は始めて行きましたが、各階にそれはもう色んなお店があります。喫茶食堂はもちろん多彩なグッズ、お洋服にアクセサリお団子お煎餅きんつば佃煮まで・・・ありゃあ、どうしたって何か買いたくなりますねえ。休憩時間は大混雑でした(笑)。
客席に入ると、正面舞台には大都市の夜景を描いた幕が降り、GINZAの文字が染め抜かれています。

*STORY*

舞台は銀座の喧噪から少し離れた裏通り?のおでん屋「だるま」から始まります。
そこのおかみさんや常連客の間にはまだ暖かい「人情」が生きており、元子ママも密かにこのおでん屋に通っていたという場所です。
短いシーンのあと、舞台脇に「三年前」という字幕が出て、時間は過去に戻り、銀行員だった元子さんが一億八千万円を横領して元上司と交渉するシーンからドラマが始まります。

紫吹淳さん演じる叡子ママさんの設定、テレビよりお若いとは聞いていたのですが、原作の小説よりさらに若い設定。なんと主人公の元子さんと高校時代同じバスケットをしていた先輩後輩同士だそうで、つまり1歳か2歳しか違わないんですね。
最初に登場するシーンは、元子さんのお店「カルネ」の開店祝いにお花を持って来るところ。チラシ等でおなじみのあの赤いドレスに、白い大きな百合の花束を抱えて、楢林医師と共に階段を降りてこられます。カルネの高級感ある内装によく映えてゴージャスです。正直私、あの赤いドレス写真で見たときはあまり好きじゃなかったのですけど;舞台で青いライトの中だと非常に艶やかで美しいです。開いた背中も見れるし・・・ほほほ・・・(<りかさんの背中大好きNEL)

「黒革の手帖」ストーリーは皆様ご存知と思いますのですっとばさせていただきまして(すいません)次の紫吹さんの出番は、閉店後のカルネで元子ママさんの相談に乗るところ。
赤いドレスとは一転、シンプルなベージュのパンツスーツで髪も自然な感じです(地毛をブローしてちょっと外ハネに)。とてもスマートでカッコいい。そして「素肌にベスト」がセクシ〜(<しかしそれは多分りかファンならではの見方というか;ちょっと地味というか、銀座ママというより女性弁護士のようなカッコよさです^^;)
後輩の経営の悩みを聞いてあげる叡子さん。そこに、問題児の波子さんがやってきて、カルネの真上に自分の店を出すと宣言します。
叡子ママは波子さんに向かって「それはホステスとしても、人間としてもどうかと思うわ」と怒ります! このときの叡子さんがとても好きです〜私。後輩の事を心から気遣ってるんだなというのもわかるし、彼女自身の「銀座の女」としての信念が見えるシーンです。
波子さんが出て行ったあとも元子さんを心配して少し会話をしますが、そこで元子さんが波子さんのパトロンである楢林医師の脱税について語り、叡子さんは不安げな表情で元子さんを見ます。

んで、元子さんが楢林氏と波子さんをブッつぶす所までが、第一幕です。

30分の休憩をはさんで、第2幕です。

叡子ママの出番は1回。でもここで、1幕では見られなかったクラブ「燭台」のセットが見られます。

「燭台」のセット(うろおぼえ)。盆を3つに区切って回すことで、うまく場面転換されていました。右の壁のむこうにはクラブ「カルネ」のセットがあり、左の壁の向こうは公園や「だるま」の場面に使われています。
「カルネ」は白と黒だけのモダンな感じでモチーフはアールデコって感じ。対して叡子さんのお店「燭台」は、もうすこし暖かい感じで壁にかかっている絵はロートレックですね。
場面は和服(白じゃなくて、薄い紫色でした)、髪をアップにした叡子ママが、閉店後に経理の計算をしているところです。「燭台」は経営が苦しいようです・・・(涙)。
そこに元子さんが来ます(叡子ママが呼んだもよう)。
叡子さんは、楢林医師が告発されて新聞に載ったことを話題にし、「大丈夫よね?」と元子さんに問う。
(もしそれが元子さんが仕組んだことなら…銀座のホステスがお客の弱みを世間にさらすなんてとんでもない事ですから、叡子さんとしては自分の後輩と言えど許せないんだろうなあと)
まあ新聞の件は元子さんのせいではない訳ですが、それにしても元子さんには良くない評判があると言って忠告します。しかし聞く耳を持たない元子さん。
叡子ママは「燭台」の灯を消すことにしたと打ち明け、銀座の良さというものがもう無くなってきた事、最後に後輩の元子さんにだけは心得というものを伝えたいと思った事、など語りますが、元子ママは聞きません。
(ていうか「古き良き銀座」が失われたのは、世間に渦巻く「人情よりお金!」な価値観が銀座まで入り込んできた所為なわけで、元子さんはその生贄筆頭であり象徴みたいな人ですからねえ・・・)
カッとなった叡子さんは元子さんの頬を叩きますが、元子さんは「結局、叡子ママは、負けたんですよ!」と言い放ち、出ていきます。

元子さんと喧嘩別れした後、心傷ついて一人佇む叡子ママ。
携帯電話を取り出して「シゲタ君」に話しかけます。どうやら彼は学生時代の友達らしい。
相手の声は聞こえませんが、しみじみ語る演技が泣けます。
着物姿の叡子さんはとてもホッソリとして美しく、おもわず後ろから肩を抱いて「守ってあげたい」という感じです。
本当にお客を大事にする、心の休まるような店だったんだろうなあと思います。それだけに、やっていけなくなっちゃったんでしょうねえ・・・
ていうか、「燭台」がつぶれる前にお客で行ってみたかったわ私・・・

元子さんが「ルダン」を手に入れようと燃えているところで2幕が終わります。

25分の休憩をはさんで、第3幕です。

3幕でのりかさんの出番は1回(とカーテンコール)。
テレビでは、国会議員になった安島さんからお金をせしめて銀座に返り咲く元子さんですが、今回の舞台では原作に近く・・・元子さんは安島さんに激しく裏切られ、波子さんとの乱闘の末、全てを失って楢林医師が勤める病院に運ばれます。
その後に、原作ともテレビとも違うオリジナルのシーンがあります。

時間は第一幕のはじめと同じ「現在」になります。
裏通りのおでん屋「だるま」。

グレーのジャケットにフレアスカート、ロングブーツをはいて大きめのバッグを持った叡子さんが来ます。通りすがりの男性に道を聞いてきたらしい。髪はセミロングの地毛で、ナチュラルな感じです。
女将さんやお客と話し、元子さんの消息がわからないという話になります。おでん屋に置いてある「だるま貯金箱」の中から、元子さんの手紙がみつかります。
・・・本当は寂しかったのね元子さん・・・
「元子のバカ」と涙ぐむ叡子さん。
女将さんはそんな叡子さんの指輪に目をとめ、その場のみんなが、今は結婚して幸せになってる叡子さんを祝います。そこに旦那が迎えにくるんですよねえ〜。

指輪かあ〜(遠い目)おめでとうございます。
平和に結婚して幸せになる女性の役は初めてですね。まさか「黒革」でそれを見るとはビックリですが、とにかくおめでとうございます、りかさん!
ちなみに相手は例の「シゲタくん」で、前の奥さんを亡くして小学生の子供が二人いて、千葉で牧場をやってる人だそうです。
(2幕で電話してるときに叡子さんが「馬に乗せて?」って頼んでましたわ・・・いいなあ、馬に乗るりかさん・・・いや牧場の仕事は大変そうだけど)

重田夫婦が去ったあと、舞台は回転し誰もいない「カルネ」のセットが幻のように現れます。
階段の上から黒いトレンチコートに黒い帽子とサングラスの元子さんが現れ、孤独に、しかし胸を張って花道を去っていくところで、幕がおります。

カーテンコールは1回。みなさんが順番に舞台に現れてお辞儀をする、シンプルなものでした。

*REPORT*(万華鏡掲示板より抜粋・転載)

黒革の舞台: NEL 2006/10/09(Mon) 21:58:47
わたしは昨日の昼を3階席で、今日の昼は1階でしたが、どちらでも観やすく出来た舞台で、感心いたしました。場面転換がすごく多いんですけど、うるさくないんですよね。
時間が長くて(合計4時間とちょっと)疲れるという面もありますが、見所も沢山あるし脚本も演出も素晴らしいと思いました。

暗転のときには、男女のダンサーが現れて象徴的なダンスを見せてくれていました。ダンサーの女性は元宝塚男役でりかさんと一緒にベルリンにも行った、楓沙樹ちゃんです。見れてよかった〜。

主演の米倉さんも素晴らしかったです。いきなりトップスターの貫禄@@;何を着ても美しかったし、客席をちゃんと見ておられるのがわかりました。また機会があればりかさんと競演してほしいです。

また他の出演者さんたち・・・特に男性陣の演技の凄さにも参りました。
左とん平さんは「喝采」でもお世話になりましたが、私は今回のとん平さんには凄い怖さを感じました(元子さんを罠にかける辺り)・・・やはり、年季のはいった男性を怒らせちゃいけないんですね・・・
あとテレビ「黒革」にカルネのマネージャ役で出演されていた、萩野崇さんが舞台では店長さんになってました(叡子ママと絡む瞬間もあり、個人的にちょっと好きな俳優さんなので嬉しかった)。

久しぶりに生りかさんを拝見して、「切なさと愛しさと心強さと」って感じです(←意味不明&古い!)

私はもう見られませんが、千秋楽まで恙無く舞台が続きますよう、お祈りしております。
ご覧になった皆様のご感想、ご報告もお待ちしております。どうぞ書いてくださいね〜。

Re: 黒革の舞台: K
黒革の手帖を観ました!!お話が長いので感想がうまく言えませんが、燭台が灯を消してしまうことになったのが残念ですが、重田くんと幸せになれて良かったと…《大まか過ぎてごめんなさい》
退団後に誰かとハッピーエンドってなかったので幸せなお顔で“だるま”で結婚されお子さまがいらっしゃるお話され、旦那さまと“だるま”と出る姿が微笑ましく嬉しいなぁって思いました!!
お衣裳…赤のドレスは背中に目が行くわたくしです。NEL様と同じくりかさんのお背中大好きなんです☆私はベージュのパンツスーツが好きです!お着物もしっとりしていて大人の雰囲気のでキレイでした!最後のグレーのショートコートにフレアスカート、黒のロングブーツは世間一般で良く見る服装ではありますがりかさんのファッションにはあまりないタイプ?(表現下手でゴメンナサイ。)に感じたので新鮮に思えました。
出待ちいたしました。サングラスは頭につけていらっしゃいました!前髪が短くなったような気がしたのですが気のせいかしら…
暗かったためあまりハッキリ覚えてないのです…役に立たず申し訳ないです。
ツルツルのキレイなお肌にツヤツヤの唇にキラキラした瞳…大好きなりかさんが目の前に!そしていつものあのティファニーの香に包まれ…女神さまはお身体が軽く見えましたし小さいお顔が更に小さくお痩せになったみたいで…ギュッと支えたくなりました(^_^!)
お車に乗ってずっと手を振ってくださいました!

休演日もオズのお稽古でしょうし、お身体ご自愛くださいませとゆう気持ちでいっぱいです。

拙い感想でごめんなさい。

Re: 黒革の舞台: floria
K様 私も今日の昼公演を観ました。K様は夜でしたか。出待ちをされたんですね。いいですねーーー!
 公演が終わって、明治座からの帰り道、静かな通りを選んで歩いていたら、なんと!居酒屋”だるま”が・・・。思わず波野さんとりかさんがいないかしらと覗いてしまいました。びっくりでした。わたしのは感想になっていないですね。りかさんはますますお綺麗で、銀座のママでした。引き出しがどんどん増えていくのがファンとしてうれしいです。

Re: 黒革の舞台: K
floria様
私の書き忘れで、私の観劇と出待ちは昨日でしたm(__)m
今日はお昼の部行こうか悩んだのですが断念しました…。観劇増やしたいですが外が寒くなる同時にお財布がとても寒いので千秋楽まで我慢いたします。
居酒屋“だるま”があったんですね!嬉しい発見ですよね☆

黒革の舞台、22日見ました: わさき 2006/10/23(Mon) 22:44:19
22日の夜、黒革の公演、見てきました。

あいかわらず、うまく書けない私・・ですが
感想を書いてみました。

ここでも感想とか読ませてもらいましたし
情報は得ておりましたが見るまではドキドキでした。

赤ドレスのリカさん、綺麗で華やかで似合ってましたね。
それでいてパンツスーツのところは、
また違う雰囲気で。学生時代の先輩というのが
よく出ていたと思います。

さらにびっくりしたのは着物が意外に似合っていた事。
すいません、本当に失礼な感想なのですが
何となく心配だったのは、その着物のシーンで。
でもアップにした髪にアクセもよく似合っていて
上品な感じがあってよかったです。

正直なところ、パンツスタイルの人と同一人物に見えないというか、がらりと雰囲気が変わったような気がします。雰囲気が変わったといえば、同じような意味でびっくりしたのは3幕で、だるまにやってくるところでしょうか。
銀座で店を経営するという事から離れて叡子ママから
重田叡子さんになり、幸せな一人の女性になったというのが
あらわれていたような気がします。

実は昔、銀座のクラブでママをやっていたのよ・・と、もし言ったとしても
まわりからは、うそーー、そんなふうに見えない〜と驚かれるのでは・・と
思うくらい、がらりと変わっていました。
かわいらしいんですよね。

ご主人に大事にされて子供からも慕われて幸せな生活を送っているんでしょうね
というのが想像できます。
だんな様がやってきて2人店を出るところは
まだ新婚ほやほやのカップルに見えました。

千秋楽もすぐですね。
リカさん、シャルウィの収録やオズの稽古が重なり
大変だったのではと思いますが
ラストまで叡子ママをがんばってほしいと思います。

*後記*
観劇感想をお寄せくださった皆様、ありがとうございました!

海外もののミュージカルなどでは、若く溌溂とした女の子を演じることが多い紫吹淳さんですが、今回の「叡子ママ」さんはライザ・ミネリ後半と並び「オトナの女性」と呼べる人だったかと思います。
したたかに強くそして孤独に生きていく女・原口元子と、銀座を離れ安定した家庭を持つことを選んだ女・叡子さん
…という対比にとどまらず、もう一息唸らせてほしかったなあという気もいたしますが…
これからのお仕事に更なる期待を抱きつつ。

今回、公演が終わってからこのページをアップするまでに大変時間がかかってしまったのは、↑のイラストを描こうとしてかなり頑張っていたのを、失敗して途中で消しちゃったからです;(一度テンションが下がるとなかなか復活しないのであった…)
読んでくださった皆様ありがとうございました。

2007/04/28 Edit by NEL