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〜ミュージカル〜
『ボーイ・フロム・オズ』
-THE BOY FROM OZ-
演出/フィリップ・マッキンリー 
振付/ジョーイ・マクニーリ

STORY >> 2幕 >

グランドピアノに向かい女性コーラスを従えて『バイ・コースタル』を歌っているピーター・アレン。場所はどこかのナイトクラブのようだ。いやらしい腰振りダンスなども披露し、観客を巻き込んだパフォーマンスで湧かせる。
オーストラリアの田舎でしょぼくれていた筈の男がどうしたことだろう?ピーター自身の語りによれば、あのあと彼は自分自身のための作曲をはじめ、ソロのエンターティナーとして活躍をはじめたのだ。敏腕マネージャーのディー・アンソニーとも出会い「また、生きることが楽しくなってきた!」と語るピーター。
そんな彼にキューピッドの矢が突き刺さる。ゲイの青年グレッグとの出会い。
モデルをしている彼は「俺にも俺のキャリアがある」と言いつつもピーターの強引なまでのラブアタックに負け、彼のパートナーとなる。
『ありきたりの男だけれど』グレッグにとって、ピーターの部屋に靴下一枚でも残すということは「一生の約束をしたことになる」のだ。
ディーのマネージメントとグレッグの演出で、ピーターは次々に大きな仕事を成功させてゆく。クラブ・コパカパーナでのショウ、カーネギー・ホールでのコンサート、そして「ミスター・アーサー」の主題歌でアカデミー賞を取り、遂にはあの!ラジオシティ・ミュージックホールでロケッツを従えてのショウを大成功に納める。
『確かだぜ、ベイビー』大喜びのピーターとグレッグ、ディーも「チケットは完売!」と御満悦、楽屋を訪れた母マリオンは、自分も再婚することになって大ハリキリ。
マリオンは言う。「人生ってこんなものかな、と思いかけたときに、ビックリするような出来事が待っているものなの」そして
『歴史は繰り返される』と歌う。

母の言葉どおり…すべての望みが叶い、頂点に上り詰めたと思ったとき、ピーターにまた試練が訪れた。グレッグが発病したのだ。
だがやはり正面から向き合うことができないピーター。
「だだの風邪だろ、すぐに治る。」
「風邪なら治るがこいつは治らない。ちくしょう、どうしても俺の口から言わせたいのか?ピーター、俺はエイズなんだよ」
グレッグは言う。「俺はもうすぐ、一人では何も出来ない身体になる。だがお前は自分の事しか考えられない人間だ。別れるなら今のうちだ」
『愛に理由なんて』ピーターはグレッグの面倒を見続け、恋人の最期を看取った。

その後ピーターは自分が主演するブロードウェイミュージカル「レッグス・ダイアモンド」を企画するが、マネージャーのディーは「全然お前らしくない」と大反対。ピーターはディーをクビにしてしまう。そして公演を行うが大不評、あっという間にクローズする。
おちこむピーターの目前にグレッグの幻が現れる。ピーターは自分も病気らしい…と弱々しく語り、グレッグは
『心をこめてアイ・ラブ・ユー』と歌い、消えて行く。
さらに、ピーターの耳にかつての妻ライザの声が聞こえてくる。
本物のライザが駆け込んでくる。週末にオーストラリアでピーターのコンサートがあるというのに本人が来ていない、とマリオンから彼女のところに連絡があったからだ。
ピーターの姿を見てほっとするライザだが、抱き合った彼の身体が骨と皮になっていることに気付く。ピーターは「すいかダイエットだよ」と冗談を言うが、会話にならない。あいかわらず、本音で向き合うことができない二人なのだ。
『あなたと私』ライザは歌う。すべて完璧なわたしたち…欲しいものを手に入れて、かわりに愛を失ってた。
「セックスなんてむかつくよね…。セックスさえなければ、あたし達うまくいってたのに」やっと言えた言葉。
「セックスさえなければ…」
「エゴも、野心もなければ。」
「…そうね、それもあるわ」
咳き込むピーターにライザは「まだ歌えるんでしょ!?」と問う。「なら問題ないじゃないの!シドニーに行きなさいよ、あなたを待ってる客がいるんだから。」
ライザもピーターもショウビズの人間、前を向いてステージに立つしかないのだ。ライザは懸命に友人を励ます。
「こんな時、グレッグならどう言うかしら?」
「…『アロハ着なよ』、かな」ピーターは笑ってライザを抱きしめる。

ピーターはオーストラリア・シドニーでコンサートを行う。
『故郷と呼べるのはオーストラリアだけ』を熱唱し、客席の喝采を浴びる。
歌い終わったあと、ひとりステージに残ってピアノに向かうピーターの目前に、子供のころの自分と母親が現れる。
「30シリング!映画に連れて行ってあげるよ」と誇らし気なピーター。アルコール中毒の父親が登場し、その硬貨は奪いとられる。
「どこまで堕ちれば気がすむのさ!実の子供から泥棒するなんて」怒る母親。「あれでも昔は…バンジョーを弾いてね、よく歌ってくれたよ。だからあんたの音楽好きはあの人の血なの」マリオンが語るのとは別に、舞台奥に父親がふたたび登場し、ピストルを自分の頭に当てる。大人のピーターは思わず絶叫する。
「やめてパパ、やめて!!」銃声が響く。

悲しい事も辛いことも、自分の胸の中にしまって…マリオンは歌う。『泣かないで』と。
子供のピーターが登場し、大人のピーターに語りかける。「こんな結末なの?」
「もう時間がないんだ」「時間のせいにしちゃダメだよ!」
リトルピーターはタップを踏み、「やろうよ!」と誘う。
「しつこいな。…そういう処、大好きだぞ。ピーター・ウールノー。さあ、消えるんだ」

ピーターは舞台から客席に呼び掛ける。最期はパーッと明るくまいりましょう!
『世界はリオ』サンバのリズムに乗って、出演者全員が白い衣装で登場し、客席は手拍子、華やかなフィナーレとなる。
ピーターも白い衣装で登場し、白いグランドピアノの上でライトを浴びながら、幕。

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                    2005/06/30 Text by NEL.